鶴見医師に聞く「断食中は水だけで大丈夫?」について

鶴見医師に聞く「断食中は水だけで大丈夫?」について

断食中は水だけといわれても、水だけで本当に大丈夫なのでしょうか?

水断食をしても栄養失調にならない

「水しか飲まなければ栄養失調になってすぐ死んでしまう」と言われたことはありませんか?もし本当なら、無人島に漂流した人が水だけしかないのに何日も生きていけるはずがありません。よってこれは間違いです。
例として、俳優の榎木孝明さんは1ヵ月間、水と少量の塩だけで生活されました。その結果は素晴らしいものでした。定期的に検査した採血結果は正常そのものだったのです。さらに元気になっていたのです。もし「食べないとすぐ死ぬ」ことが本当なら、榎木さんは1ヵ月も水と塩だけでは生きていけなかったでしょう。
(参考文献:『30日間、食べることやめてみました』榎木孝明・著/マキノ出版)

榎木孝明さんの例から言えることは次の通りです。
・ 1ヵ月程度の水断食でも栄養失調にならない(過度な断食では栄養失調になる)
・ 断食をすることで元気になる、エネルギッシュになる

その理由は何でしょうか?
答えは、断食することでケトン体が糖質に代わって出現し、解糖系ではなくミトコンドリア系のエネルギー回路でエネルギーを産生するからです。ミトコンドリア系のエネルギー回路は、解糖系のエネルギー回路と比べて約19倍多くエネルギーを産生することができます。そのため、食べている時とは比較にならないエネルギーを持ち、元気になるのです。
今までの常識しか知らないと「食べないと死ぬ」という先入観で、断食の恩恵を受けることができない人がたくさんいることは事実です。鶴見クリニックに縁があった皆様は、時々断食をしていただきたいです。

断食とオートファジー

断食や長寿を語る上で欠かせないの「オートファジー」でしょう。オートファジーは学者のクリスチャン・ド・デューブ、ジョージ・エミール・パラーデ、アルベルト・クラウデらが発見しました。この功績は1974年のノーベル生理学・医学賞の受賞となりました。また最近では、2016年に日本人の大隅良典氏(東京工業大学名誉教授)がオートファジーの仕組みを解明し、その功績が称えられノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

細胞内のタンパク質を分解

オートファジー(Autophagy)は細胞が持っている細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つで、「自食(ジショク)」と日本語で訳されます。オート(Auto)とはギリシャ語の「自分自身」を表す接頭語で、ファジー(phage)は「食べる」という意味です。酵母からヒトに至るまで、真核生物に見られる機構のことで「長寿に欠かせない機構です。

人間は60兆個(アメリカでは100兆個)もの細胞が存在しますが、酸化し古くなったタンパク質の多くは体外に便や汗や尿にとなって排出されます。しかし排出されなかったものは細胞に残り、細胞を衰えさせダメージを与え、下手をすると細胞を死に至らしめます。すると体調不調が起こり病気になります。そこで細胞死が起こる前に、古くなったり壊れたりした細胞内のタンパク質を集め分解しそれを元に新しいタンパク質を作る機構が存在します。それがオートファジーの機構です。
細胞内にミトコンドリアというエネルギーを生み出す小器官が存在します。1個の細胞には数百から数万も存在します。このミトコンドリアが活発だとATPというエネルギーがしっかり出て人間は元気でいられるのですが、このミトコンドリアもオートファジーによって新たに生まれ変わります。オートファジーは「古くなった細胞を内側から新しく生まれ変わらせる仕組み」なのです。オートファジーは細胞内に侵入した病原菌やウイルスも分解、浄化し排泄させる力も持っています。それ故どんな病気にも有効に働く力になるため「健康に欠かせない機構」でもあるのです。

オートファジーは食物を摂取したときには働かないという特徴です。オートファジーは細胞が飢餓状態(断食)を16時間続けた後に働き始めるという特徴を持っています。「水断食(絶食)」をして飢餓状態を16時間以上、可能であれば48時間続けるとオートファジーの機構は活動を開始します。

その結果、次のことが起ってきます。
① 内臓の臓器が少しずつ正常化していく。
② ミトコンドリアが正常化しエネルギッシュになる。
③ 酸化した体脂肪が抜け落ち悪玉のサイトカインが出なくなり慢性病から解放されていく。
④ がん細胞がアポトーシス(自殺)し、がん細胞はどんどん抜け落ちていく。
⑤ 血液状態が極めて良くなり動脈硬化が改善していく。
⑥ 長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)が活性化する。

オートファジー

1日間(24時間)水だけ飲んでいるとオートファジーの機構は発揮されますが急に①~⑥が起こるわけではありません。ショート断食やミドル断食を時々繰り返しすると、少しずつ良い状態になっていくと言えます。オートファジーはあらゆる生物が備えている基本的な生命現象と言える機構です。ある程度の飢餓状態でしか発揮できないのは、食べれば食べる程細胞内の環境が悪くなるからです。病気はどんな病気でも細胞内の環境が劣悪になって起こります。その細胞内の列核な環境は過食では火に油を注ぐだけです。クスリも同様です。一度全てを抜き新品にしなくてはなりません。

そこで必要なのが断食なのです。水だけ断食を1日以上行うとオートファジーが出るのは劣悪な物を良い物に切り替え、再利用したいからです。オートファジーが飢餓状態で出現するのは人間や生命の持つ、少しでも生き延びようとするための救命機構と言えると思います。

鶴見式ファスティング療法


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